中古ビル売却の注意点
事業用中古ビルの売却は、住宅用の物件よりも売却価格が高く、成約すればおおきな利益が見込めるでしょう。
反面、中古ビルの買い手は法人や自営業者・投資家・不動産業者と市場が限定されているため、流動性が低く売却に時間がかかってしまうケースが多いところがネックです。
所有するビルの状態やテナントの状況、売却相場などを考慮したうえで、売り出し方や売却価格を決定しましょう。
この記事では、中古ビルを売却する際の注意点を7つご紹介します。
相続税対策や利回りの低下などを理由に中古ビルの売却をお考えの方は、是非参考にしてください。
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目次
1. 中古ビル売却は時間をかけて慎重に行う
中古ビルを売却する際は、一般的な住宅用不動産売却のような広告宣伝などの目立った販売活動を行いません。
事業用のビルが売り出されていることが露出すると、何かしらの経営戦略や事業転換などが行われたことが周囲に発覚してしまうからです。
仲介する不動産業者も、事業用ビル物件の売却情報は本当に信頼できる顧客以外には紹介しません。
中古ビルは時間をかけて慎重に売却しましょう。
ブローカーが関わる売却はトラブルを抱えやすい
一般に公開されないビルの売却情報を集め上げ、不動産業者に提供する「ブローカー」という業者が存在します。
教えたビル売却物件の成約が成立すると、ブローカーは仲介手数料の半分を要求してきます。
ブローカーを挟むことでビル売却に時間をかけずに済む場合もありますが、ときにはトラブルを招くことも。
しっかりした不動産業者は、ブローカーとのつながりを持ちません。
2. ビルの相場を調べる
中古ビルを売却する際は、まずは所有しているビルの相場を調べましょう。
相場を知ることで大まかな売却価格を想定できるからです。
売却相場を簡単に調べるなら、今売り出し中の周辺ビルの価格や、過去の取引事例をチェックする方法がおすすめです。
売り出し中物件は収益物件専門サイトや不動産ポータルサイト、過去の取引事例は国土交通省「土地総合情報システム」で確認できます。
相場を信じすぎてはいけない
築年数や階層・間取りが近い類似物件であっても劣化状況や景観などが違えば、売買価格や成約率は変わります。
また、サイトに掲載されている売り出し価格通りに成約するとも限りません。
また、土地総合情報システムの過去事例は5年前までの情報が掲載されているため、現在では周辺の環境は大きく変化している可能性があります。
こういったことを考慮したうえで、相場はあくまで参考程度と割り切っておきましょう。
3. 売却時のテナントをどうするのか
売却したいビルにテナントが入っている場合は、賃貸契約を買い主に引き継ぐことで売却できます。
テナント入居者にとっては貸主の名前と賃貸料の振込先は変わるだけで、あとは何も問題ありません。
これを「オーナーチェンジ」といいます。
この売却方法のデメリットは、引き継いた賃貸契約がネックとなり新しいオーナーが自由に運用しにくいという理由から、買い手に敬遠されてしまうケースがある点です。
中古ビルは、1度テナントを空の状態にしたほうが売却しやすいのですが、そのためにはテナント入居者との立ち退き交渉が必要です。
立ち退き料を用意し、最低でも売却の1年前から交渉を始めましょう。
4. 買い手を想定した売却戦略
中古ビル売却は買い手が限定されているため市場規模が狭く流動性も低いため、ひとつの物件を売るのに時間がかかります。
まずは、ビルの買い手となる人にはどんな人がいるのかを確認することで、具体的な売却戦略を計画できるでしょう。
中古ビル売却物件の主な買い手は、
- ・好立地な物件を求める法人・自営業
- ・高利回りの物件を探している投資家
- ・リフォームに強い、または再開発が目的の不動産業者
などです。
5.不動産業者を選ぶときは一括査定を利用する
中古ビルを売るためには、不動産業者に仲介を依頼しなければなりません。
付き合いのある不動産業者などがいない場合は、一括査定サイトに申込み、複数の不動産業者に査定依頼することをおすすめします。
複数の不動産業者を比較することで、より信頼できる不動産業者を見つけられるでしょう。
ビルの状況に合った媒介契約を結ぶ
不動産業者を選定したら、次は媒介契約を結締します。
媒介契約には、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3種類があります。
それぞれ契約内容が異なるため、売却予定のビルの状況に合ったものを選びましょう。
すべての媒介契約の有効期限は3ヶ月で、専属専任媒介契約・専任媒介契約は他社との契約ができません。
専任専属媒介契約は売り手自身が買い手を見つけることが禁止されていますが、専任媒介契約では可能です。
一般媒介契約は複数の業者と契約ができるうえ、売り手自身が買い手を見つけることが可能です。
一方で販売活動の進捗報告義務がないため、現状を把握できないといったデメリットがあります。
6. ビル売却にかかる費用を把握しておく
ビル売却でかかる費用には、印紙税・登録免許税・譲渡所得税・消費税といった税金から、不動産業者に支払う仲介手数料などがあります。
とくに譲渡所得税や消費税、仲介手数料は高額になるため、事前にしっかり計算しておきましょう。
消費税に関しては、2年前の課税売上高が1,000万円未満であれば課税免除になります。
売却益が出た場合かかる譲渡所得税
ビルが購入時の価格よりも高く売れた場合は譲渡所得税が課せられます。
課税譲渡所得金額は次の計算方法で求められます。
譲渡所得=売却価額 -(取得費※1+譲渡費※2)
※1 ビルを購入した際にかかった不動産購入費や仲介手数料など
※2 ビル売却の際にかかった登記免許税や仲介手数料など
税額はビルの所有期間が5年以上の場合は「長期譲渡所得」、5年以下を「短期譲渡所得」として、それぞれに定められた税率をかけて計算します。[注1]
区分 所得税 住民税
短期譲渡所得 30% 9%
長期譲渡所得 15% 5%
仲介手数料は売却価格によって上限額がある
ビルの売買契約が成立したときに、仲介依頼した不動産業者に支払う報酬です。
宅地建物取引業法で上限額が定められており、売却価格に応じて下記の計算方法で算出します。
売却価格 上限額
200万円以下 売却価格×5%(税別)
200万円以上400万円以下 売却価格×4%+2万円(税別)
400万円以上 売却価格×3%+6万円(税別)
7. 売却成約後はテナントへの通知を忘れずに
テナント入居者に売却についての同意を得る必要はありません。
しかし、ビルの所有者が変われば賃貸料の振込先も変わるため、そのことを伝えるための「地位承継通知書」を出さなければなりません。
地位承継通知書は旧オーナーと新オーナーの連名で作成します。
必要なポイントを押さえて中古ビル売却を有利に進めよう
事業用中古ビルをできるだけスムーズに売却するためには、押さえるべきポイントがたくさんあります。
今回ご紹介した7つの注意点をふまえて、スムーズなビル売却を目指しましょう。
こちらの記事の監修者
torio real estate店長
宿南 秀文
- 平成18年度三井のリハウス(現在の三井不動産リアルティ株式会社)を経て、平成20年株式会社torioに入社。
- torio創業初期から数多く顧客様との商談・交渉・マーケティングリサーチを行ってきた経験を活かし、お客様の保有数不動産価値の創造に努めます。