月極駐車場やコインパーキングの経営は赤字で失敗するって本当?事例で解説
駐車場経営はアパート・マンション経営に比べると、物件の建築費がかかりません。
そのため初期費用も少なく、手軽に始めやすい土地活用の一つです。
事業開始までの時間が短く、他の土地活用に転用しやすいのも人気の理由でしょう。
それでもリスクがゼロではありません。
「駐車場経営を始めたものの失敗した」「赤字となって撤退した」などの声も聞かれます。なぜ駐車場経営に失敗してしまうのでしょうか。
この記事では駐車場経営の基礎知識や失敗の事例、失敗を避けるための注意点を紹介します。
月極駐車場やコインパーキングの経営をお考えなら、失敗のパターンを知って成功に結びつけてください。
目次
駐車場経営に失敗しないための基礎知識
まずは駐車場経営を始めるなら知っておきたい、お金の基礎知識を紹介します。
月極駐車場やコインパーキングの経営の際は、次のような費用や利益の内容について理解しておきましょう。
初期費用 |
■道路舗装費用(砂利・アスファルト・コンクリート) ■車止めの設置費用 ■整地費用や歩道切り下げ工事費用(必要な場合) ■設備費用(コインパーキングのフラット板・精算機など) |
料金設定 (単価×稼働率) |
■月極駐車場の場合 単価:月額料金×稼働率:契約済みの車室÷車室の総数 ■コインパーキングの場合 単価:1時間の料金×稼働率:1日の駐車時間÷24時間 |
各種費用 |
■固定資産税 ■管理委託費用(駐車場の管理を外部に委託する場合) |
利回り |
年間利回り(%)=(年間収益-年間経費)÷投資額×100 |
「初期費用」は開業前に必要なコストのこと。比較的ローコストな駐車場経営でも、一定の費用は必要です。
経営で失敗しないためには、なるべくそれぞれの費用を抑えて、高い利回りを実現させましょう。
「料金設定」の単価は月極駐車場なら月の賃料、コインパーキングなら1時間あたりの料金設定で、稼働率を想定して1カ月にいくらの収益が見込めるかを計算します。
「各種費用」は固定資産税などの税金がメインで、管理を委託する場合は手数料も必要です。
「利回り」は投資額に対してどれほどの収益が見込めるかの計算に使います。
どのような形態の駐車場を、どう経営するかを選ぶのも大切です。
駐車場経営には2つの種類と3つの経営方式があり、それぞれで収益や費用も異なります。
駐車場経営の種類
駐車場経営には「月極駐車場」経営と「コインパーキング」経営の2種類があります。
それぞれの仕組みや特徴は以下の通りです。
月極駐車場経営
月極駐車場経営は、オーナーが利用者と賃貸借契約を結び、毎月の賃料を受け取る仕組みです。
利用者が支払う賃料に車の台数をかけた額が収入です。
月極駐車場は住宅街やオフィス街など、定期的な駐車のニーズがある場所が適しています。
地面を砂利やアスファルトなどで整備して、車止めなどを設置するだけで開業できるため、初期費用を抑えられるのが特徴です。
コインパーキング経営
コインパーキング経営は、不特定多数の利用者に利用時間分の料金を支払ってもらう仕組みです。収入は利用時間・利用回数で決まります。
適しているのは駅前やオフィス街、病院や学校近くなど、一時的に訪れる人が多い場所です。
月極駐車場より大きな利益も期待できますが、ロック板や精算機を設置するため、初期費用がかかる傾向にあります。
駐車場の経営方式
月極駐車場経営とコインパーキング経営のどちらにしても経営方法は次の3つ。「個人経営」と「管理委託方式」、「一括借り上げ方式」です。
「個人経営」は、駐車場の施工から管理までをオーナーだけで行う方式。
「管理委託方式」は施工をオーナーが行い、管理を管理会社に委託する方法です。
「一括借上げ方式」は、駐車場事業を展開する会社に土地を貸して、駐車場を運営してもらう方式で「サブリース」とも呼ばれます。
収益性では、手数料を支払わない個人経営が有利ですが、管理や運営を自ら行う必要があります。
副業での駐車場経営なら、管理委託方式や一括借り上げ方式の方がよいというケースもあるでしょう。
駐車場経営が失敗してしまうパターン
駐車場経営の失敗には、いくつかのパターンがあります。実際の失敗事例を交えて、それぞれのパターンを見ていきましょう。
市場調査が不十分だった
駐車場経営が失敗するパターンで多いのは、事前の市場調査が不十分だったため、思ったような収益を得られないケースです。以下のような事例が代表的です。
【事例:需要のない場所だった】
店舗のない住宅街にコインパーキングをつくって、赤字になってしまったケースがあります。車で訪れる人が少なく、需要の少ない場所だったためです。
他にも学生街や車で訪れにくい場所などは、コインパーキングの利用者が少なく、収益が見込めません。
【事例:競合との価格競争が激しい場所だった】
需要があっても周囲に競合が多いと、価格競争に巻き込まれます。月極駐車場でもコインパーキングでも、同じ地域で集客を競うなら、価格がより安い方が有利です。
収益を決めるのは「単価×稼働率」です。単価が競合より高いと、稼働率が低くなり赤字になる可能性があります。
【事例:利用者が駐車しにくい場所だった】
駐車場に面した道路が狭いため、運転が苦手な人や大きな車両の利用者が少なくて、赤字になるケースもあります。
駐車場の敷地が狭い場所も敬遠されがちです。
狭小な道路に面した場所や狭い土地を月極駐車場でもコインパーキングにする場合は、入り口を広くしたり、駐車しやすいスペースを考えるなどの工夫が必要でしょう。
トラブル対応の手間や費用を考えていなかった
無賃駐車や駐車場内での事故など、不慮の出来事による手間やコストで失敗するパターンもあります。
【事例:個人経営で放置車両トラブルに対応できなかった】
個人経営の駐車場では、トラブルに対応しきれない場合もあります。例えば利用者が賃料を払わないケースです。
賃料の滞納だけではなく、車両を放置したまま連絡が取れなくなることもあります。
放置車両がある場合、個人経営ではオーナーが車両の撤去費用などを支払うことになりかねません。
個人経営では、駐車場内で起きる事故への対応もオーナーの仕事です。
【事例:管理会社が適切な処理をしてくれなかった】
管理会社に任せている場合、放置車両や駐車場内の事故にも管理会社が対応してくれます。
問題なのは管理会社の体制がずさんだった場合です。
そうした管理会社ではトラブルへの対応が適切でないケースもあります。
清掃が行き届いていなかったり、設備不良に対処していなかったりすると、利用者からのクレームが発生するでしょう。
リスクを想定できていなかった
駐車場経営で起こり得るリスクを想定しておらず、発生した際に対応しきれず失敗するパターンもあります。
【事例:利用数が想定に届かず、資金がショートした】
事前の想定が甘かったため、実際の稼働率が想定以下となり、赤字になるケースもあります。駐車場はいつも満車ではありません。
甘く見積もった稼働率で利回りを計算していると、利益が必要経費を下回ってしまう可能性があります。
【事例:近くに競合する駐車場ができて利用数が減った】
開業直後は順調でも、新しい駐車場が近くにできて利用者が減るケースもあります。競合の方が安ければ、利用者を奪われてしまうでしょう。
利用者を取り戻そうと値下げした場合、さらに収益が減少するリスクもあります。
【事例:自然災害が起きて修理費がかかってしまった】
自然災害のリスクも想定しておきましょう。
駐車場経営は建物がないため、自然災害が発生してもアパート経営に比べれば、大きな被害を受ける可能性は低いでしょう。
それでも地震などで舗装にダメージを受けるなど、復旧コストがかかるリスクはあります。
税制や契約を理解していなかった
税制や管理会社との契約を理解していなかったために、駐車場経営が失敗してしまうパターンもあります。
【事例:固定資産税の支出を計算していなかった】
税金の支出を計算していなかったため、赤字になってしまう失敗もよくあるパターンです。
駐車場の土地には、固定資産税(都市計画法の市街化区域内なら都市計画税も)が課税されます。
固定資産税は土地と建物の両方に課税されるため、建物のない駐車場は税金が安くなると勘違いしがちです。
居住用の土地なら「住宅用地」として優遇措置が適用されますが、駐車場は更地と同じく、固定資産税が満額で課税されるため注意してください。
【事例:管理会社との契約内容を理解していなかった】
駐車場の管理会社との契約をしっかりと確認していなかったことで、余計な支出が増えることもあります。
例えば契約満了までに駐車場をやめる場合に「管理会社に違約金を支払う」条項が盛り込まれている契約や、土地を元に戻すための「原状回復費を支払う」条項を含む契約もあります。
契約内容を確認しておかないと、違約金や原状回復費がかかってしまうこともあるのです。
駐車場経営を失敗しないための対策・注意点
駐車場経営を成功させるために大切なのは、上記のような失敗パターンに陥らないことです。失敗を防ぐための対策や注意点を次にまとめました。
事前に市場調査をしっかりと行う
駐車場の需要の有無は、事前の市場調査で分かります。
月極駐車場なら大規模マンションが近くにあるなどが判断材料です。
コインパーキングなら路上駐車できない大通りの近くや、店舗が多い場所などを選びましょう。
適正価格で稼働率を上げるためには、近くにある競合の賃料や料金相場の調査は必須です。
調査はリサーチ会社に頼むこともできます。費用対効果を考えた上で検討してみましょう。
トラブルに対する対策を立てておく
さまざまなトラブルを想定して対策を立てておきましょう。
トラブル対策を自身で行うのが困難なら、個人経営ではなく管理会社に管理を委託することも考えましょう。
きちんとした管理会社なら、放置車両や違反駐車、事故対策として、必要に応じて監視カメラや入出庫の管理システムを導入してくれるはずです。
経営リスクを想定して対策する
稼働率の甘い見積もりで収益が想定より低くなってしまうリスクは、空き車室があることを前提とした現実的な利回りで計算し直して防ぎましょう。
周辺の駐車場を調べれば、新たな競合参入の可能性も判断できます。近くの駐車場がいつも満車なら、競合が参入してくる可能性も高くなるでしょう。
経営上のリスクがあまりに高い場合は、駐車場経営に踏み切るのではなく、土地を売却するのも選択肢の一つです。
税制や管理会社との契約を理解しておく
固定資産税や管理会社への委託手数料などの必要経費は、きちんと計算しておくことが大切です。
得られる収益から税金や手数料、その他の維持費などを差し引いた利益がいくらになるのかを正確に見込んでおきましょう。
健全なキャッシュフローが構築できます。
管理会社に委託する場合は、正式な契約を交わす前に不明な点を確認してください。
ポイントを押さえて駐車場経営の失敗を回避しましょう
副業で行うにしても、駐車場経営はビジネスです。
しっかりとした事業計画を立てて参入しましょう。
失敗を回避するには、正しい情報を把握しておくことが大切です。
駐車場経営が初めてで、正しい情報かどうかの判断が難しいなら、信頼できる管理会社に相談してみてください。
こちらの記事の監修者
torio real estate店長
宿南 秀文
- 平成18年度三井のリハウス(現在の三井不動産リアルティ株式会社)を経て、平成20年株式会社torioに入社。
- torio創業初期から数多く顧客様との商談・交渉・マーケティングリサーチを行ってきた経験を活かし、お客様の保有数不動産価値の創造に努めます。