一棟アパートの売却時の注意点を解説!費用や高く売る方法は?
一棟アパートを売却する際には、ローンが残っていないか、抵当権は抹消しているかなど、注意すべき点がいくつかあります。
本記事では、一棟アパートを売却する時の注意点や、売却時にかかる費用、高く売る方法を解説していきます。
目次
一棟アパートを売却するときの注意点
一棟アパートの売却では、入居者がいる場合やローンが残っている場合など、状況に合わせて必要な手続きや対応が異なります。ここからは、一棟アパートを売却する際の注意点をご紹介していきます。。
入居者がいる場合は手続きが必要
売却予定の一棟アパートに入居者がいる状態の場合は、以下いずれかのことを行う必要があります。
方法 |
メリット・デメリット |
オーナーチェンジする |
● 入居者がいる状態でアパートを売買する方法 ● メリット:立ち退きトラブルを防止でき、既に入居者がいるため、収益物件としてアピールしやすい ● デメリット:買い主はアパートの内覧ができず、賃料変更も難しいため売値が安くなりやすい |
立ち退きを依頼する |
● 入居者に退去を依頼し、その後売却する方法 ● メリット:しかし、内覧したり、アパート以外の用途で利用できたり、買い主の自由度が高くなる ● デメリット:立ち退きを命じる際は、立退料の支払いが必要となりコストがかさむ。さらに、アパートが売れなければ管理費のみかかってしまう |
なお、アパートの住人に立ち退きを依頼する際は、契約満了の6カ月~1年前に通知するなど、借地借家法に則る必要もあります。[注1]
[注1]e-Gov法令検索「借地借家法」.https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090.(参照:2022-10-18)
ローンが残っているときは返済が必要
通常、ローンが残っている状態ではアパートを自由に売買できません。そのため、以下いずれかの方法でローンの完済が必要です。
返済方法 |
詳細 |
売却代金で支払う |
● 既に買い主が決まっており、売却代がローンを上回るときに有効。 |
売却代と貯金で支払う |
● 売却代金で足りない分は貯金などで補って支払う方法 ● アパート売却時には諸経費も必要なため不足しないように注意する必要がある |
ローンを組み直す |
● 繰り上げ返済後、別のローンに組み直す(借り換える)方法 ● ただし、ローン審査の通過が必要 |
上記以外にも、一定条件のもと債権者(金融機関)から抵当権を解除してもらい売却する、任意売却という方法もあります。しかし、債権者の合意や連帯保証人も必要など、注意点事項も多い方法です。
不動産会社は実績と信頼で選ぶ
基本的に一棟アパートのような投資物件を売却する際には、不動産会社に仲介を依頼します。、その際に専門性の高い不動産会社でないと事務処理に手間取ったり、査定価格が適切で無かったりする恐れがあるため、アパートの取引実績が多い不動産会社をを選ぶようにしてください。なお、実績が豊富でも担当者と相性が悪ければ、さまざまな相談をしにくいため、担当者が信頼できる方かどうかも事前に判断してから契約をしましょう。
売却手順や費用を確認する
一棟アパートの売却では、実際に売買契約が成立するまでに多くの時間と手間がかかります。さらに仲介手数料や不動産譲渡所得税など、高額の費用や税金も発生します。
そのため、売る前に下準備や必要費用を確認して、無駄な時間やコストがかからないように進めましょう。
一棟アパートの売却手順
一棟アパートの売却では複数の手続きが必要です。以下におおまかな流れを解説します。
- 売却したいアパートの相場を調査する
同一地域同一規模のアパートの売却相場を確認します。
- 不動産会社に価格査定を依頼する
相場を元に不動産会社に査定を依頼します。査定価格に違いがあるため、複数社に依頼しましょう。
- 不動産会社と仲介契約の締結
査定価格や担当者との相性を元に仲介契約を締結します。
- 売却価格を決めてアパートを販売する
価格を決めてアパートを売却します。なお、販売活動は不動産会社の担当です。
- 買い主が現れたら売買契約を締結する
買い主が決まったら、必要書類のやり取りをして売買契約を締結します。
- 売買代金を受け取りアパートを引き渡す
買い主がローン審査に通過すれば、代金を受け取り、アパートの引き渡しとなります。
- 確定申告をして税金を支払う
不動産を売却した年の翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。売買益は課税対象のため、事前に税金額も確認した方が安全です。
一棟アパートの売却時に必要な費用
アパートの売却では税金を含む複数の費用が発生します。ここでは、代表的な費用を紹介します。
仲介手数料
不動産会社と仲介契約が成立したときに払う費用です。仲介手数料は、
宅地建物取引業法により以下の上限が定められています。[注2]
取引金額 |
手数料上限 |
200万円以下 |
5%以内 |
200~400万円以下 |
4%以内 |
400万円超 |
3%以内 |
[注2]国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
https://www.mlit.go.jp/common/001307055.pdf(参照:2022-10-18)
印紙税
不動産売買契約書は印紙税法上の課税文書です。そのため、契約金額
により以下の支払いが必要です。
契約金額 |
印紙税 |
100万円以上500万円以下 |
2千円 |
500万円以上1千万円以下 |
1万円 |
1千万円以上5千万円以下 |
2万円 |
5千万円以上1億円以下 |
6万円 |
なお、上記以外の金額は国税庁のホームページで確認できます。[注3]
[注3]国税庁.「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」.https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm,(参照:2022-09-29)
抵当権抹消登記費用
金融機関からローンを借りて不動産を購入したときは、担保として抵当権が設定されます。抵当権の抹消費用の相場は以下の通りです。
- 自分で手続きする場合 :約5千円
- 司法書士に依頼する場合:約1万5千円
抵当権は法務局で手続きをして抹消します。なお、ローン完済時に抹消手続きが済んでいる場合は、上記は不要です。
不動産譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た際は、その利益分に対して不動産譲渡所得税が課税されます。税率は以下のようにアパートの所有期間により異なります。
所有年数 |
分類 |
税率 |
5年以下 |
短期譲渡所得 |
39.63% |
5年超 |
長期譲渡所得 |
20.315% |
なお、上記は復興特別所得税を含む金額です。
消費税
課税事業者はアパートの建物部分の売却額に対して10%の消費税が課税されます。
なお、課税事業者とは特定期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者のことです。
繰り上げ返済手数料
金融機関によっては、住宅ローンの繰り上げ返済に対し手数料を取るケースがあります。また、繰り上げ返済限度額を設定していることもあるため、確認が必要です。
立退料
アパートの利用者に対し、立ち退きを命じる際は義務ではないものの、立退料を支払うのが一般的です。費用相場は以下のいずれかとなります。
- 家賃の6カ月分
- 新居の入居費用
測量費用
土地も合わせて売却する場合、測量図を作成することもあり、費用相場は40~50万円程度になることが多いです。ただし、国道に面するなど条件によっては100万円近くかかることもあります。なお測量は義務ではないものの、行うことで後々のトラブル防止に役立ちます。
一棟アパートを高く売る方法
一棟アパートを高く売るためには、周辺環境の変化などから売却に適したタイミングの見極めが必要です。もしも一棟アパートだけでなく、土地も所有しているなら、更地にした方が良いケースもあります。
売却に適したタイミングで売る
アパートの売却には、以下に挙げるタイミングが適しています。
- 周辺環境の利便性が向上したタイミング築20年以内であるタイミング
- 減価償却費を計上し終えたタイミング
また、周辺環境が衰退したときなどは早めに売り切ることで、損失を防ぐことにつながります。
収益物件としての価値を高める
投資用アパートとして売却する際には、以下の点を意識しましょう。
- 満室にする(空室率を下げる)
- 利回りを上げる
- 滞納などのトラブルは解決しておく
満室であっても滞納の多い物件などは、敬遠されやすいため注意が必要です。
更地にした方がよいケース
アパートと土地の両方を売却する場合は、建物を取り壊し更地にした方が良いケースもあります。
- 家賃収入が少なく土地が広い
- 築35年以上など、アパートが相当古い
ただし、更地にした場合は固定資産税など上がってしまうため、基本的にはアパートがある状態で売却します。状況に応じて判断していきましょう。
一棟アパートの売却成功の鍵は不動産会社選びにあり
一棟アパートの売却には、注意点も多く複数の費用もかかります。また、売却価格は査定の時点で決まり、手続きの多くは仲介する不動産会社が行うため、良い不動産会社を選べるかどうかかが、売却成功の鍵でもあります。
収益物件は通常の不動産とは異なるため、一棟アパートの売却を検討している場合は、売買を専門に行っている実績豊富な不動産会社に事前に相談するようにしましょう。
こちらの記事の監修者
torio real estate店長
宿南 秀文
- 平成18年度三井のリハウス(現在の三井不動産リアルティ株式会社)を経て、平成20年株式会社torioに入社。
- torio創業初期から数多く顧客様との商談・交渉・マーケティングリサーチを行ってきた経験を活かし、お客様の保有数不動産価値の創造に努めます。